🕐 1分でわかるサマリー

結論3行:

  1. 実地確認=委託先の処理施設を実際に訪問し、適正処理を自分の目で確かめること。法律上は努力義務(法12条7項)で罰則はない
  2. ただし条例で義務化している自治体があるのが最重要ポイント。愛知県・岐阜県・静岡県など、条例で義務と確認できる県だけで8県(+政令市等にも同種ルールあり)
  3. 義務がない地域でも、実地確認の記録は「排出事業者として注意義務を果たした」証拠になる。年1回・チェックリスト+写真+日付で残すのが基本形

自社は義務?の判定チャート:

flowchart TD
    Start[委託先の処理施設は<br>どの都道府県・政令市にある?] --> Q1[その自治体に<br>実地確認の条例・要綱はあるか?<br>(下の一覧表+自治体サイトで確認)]
    Q1 -->|条例で義務あり<br>例: 愛知・岐阜・静岡| Gimu[条例義務として実施<br>頻度・記録年数は条例に従う<br>(例: 委託前1回+年1回、記録5年)]
    Q1 -->|義務なし| Doryoku[法12条7項の努力義務<br>→ それでも年1回の実施を推奨<br>(注意義務の証拠になる)]
    Gimu --> Kiroku[チェックリスト+写真+日付で記録]
    Doryoku --> Kiroku

    classDef gimu fill:#0e7a5f,stroke:#0a5c48,color:#ffffff,font-weight:bold
    classDef rec fill:#fef3e2,stroke:#b45309,color:#7c3e02
    class Gimu gimu
    class Kiroku rec

※判定基準は「施設の所在地」の自治体ルールです。自社所在地と委託先所在地の県が違う場合は両方確認してください。


📖 実務解説

実地確認って、そもそも何をしに行く?

委託契約とマニフェスト(産廃の受け渡しを追跡する伝票。第5回参照)が「書類上の管理」だとすれば、実地確認は書類と現実が一致しているかを見に行く行為です。

法律の建て付けはこうです。

  • 排出事業者は、委託した産廃について処理の状況に関する確認を行い、最終処分まで適正に処理されるよう必要な措置を講ずる努力義務がある(法12条7項・平成22年改正で追加、平成23年4月1日施行)
  • 確認方法として環境省が示すのは、①実地確認、②優良認定業者(国の基準を満たし情報公開している処理業者)の公表情報の確認、など
  • 努力義務なので怠っても罰則はない。ただし後述のとおり、条例と措置命令リスクが話を変えます

どこの自治体が条例で義務化している?

愛知県が条例改正時にまとめた資料によると、条例で現地確認を義務化している都道府県は次の8県です(条文番号つきで確認できるもの)。

都道府県条例名根拠条文特記事項
北海道循環型社会形成の推進に関する条例32条委託後の定期確認のみ義務(処分業者対象)
宮城県産業廃棄物の処理の適正化等に関する条例8条1項・2項県内の処分業者が対象
岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例18条1項・2項怠ると勧告→公表の規定あり(19条)。委託後の細部は運用通知による
静岡県産業廃棄物の適正な処理に関する条例10条1項・2項委託時+毎年1回以上
三重県産業廃棄物の適正な処理の推進に関する条例7条1項処分業者のみ対象
山口県循環型社会形成推進条例26条1項・2項委託前は義務、委託後は努力義務
熊本県生活環境の保全等に関する条例85条1項・2項勧告(85条3項)・公表(86条)の規定あり
愛知県廃棄物の適正な処理の促進に関する条例7条1項・2項実地確認義務自体は従来から条例にあり、2018年10月の改正施行で年1回以上・記録5年保管・勧告公表等が義務化/明確化

このほか、要綱・指導等で実地確認を求める県・政令市・中核市が複数あります(例:名古屋市は指導要綱で、福島市は条例で実地確認を規定)。条例義務か要綱指導かの区別も含め、委託先所在地の自治体で必ず確認してください

⚠️ 必ず最新情報を各自治体で確認してください。 条例・要綱は改正されます。また同じ「義務」でも、対象(処分業者のみか収集運搬業者も含むか)、頻度、免除条件(優良認定業者への委託時は免除等)、リモート確認の可否(愛知県は委託後の定期確認に限りビデオ通話等を許容)が自治体ごとに違います。

義務がない地域でも行くべき理由(社内説得用)

罰則がないのになぜ行くのか。答えは**法19条の6(措置命令)**です。委託先が不法投棄した場合、排出事業者にも原状回復の措置命令が及びうるのは第3回で扱ったとおり。その要件判断では「処理状況の確認など注意義務を尽くしていたか」が見られます。実地確認の記録は、その注意義務を果たした最強の証拠です。

💡 上司への説明フレーズ例:「年1回・半日の訪問で、万一委託先が事故を起こしたときに『うちは確認義務を果たしていた』と言える記録が作れます。保険料だと思って行かせてください」

当日は何を見る?(6つのポイント)

  1. 許可証と実態の一致 — 掲げられた許可品目・処理方法と、実際に受け入れている廃棄物が合っているか
  2. 受入・保管状況 — 保管量が基準を超えて山になっていないか、飛散・流出・悪臭はないか
  3. 処理工程 — 自社の廃棄物がどの設備でどう処理されるか、説明してもらい見学する
  4. 周辺環境 — 場外への飛散、排水、近隣とのトラブルの気配
  5. 帳簿・マニフェストの流れ — 受入から処分・二次委託までの記録が追えるか
  6. 経営状況のヒアリング — 受入量の増減、設備投資の予定、許可更新の予定。経営悪化は不適正処理の前兆になりやすい

アポの取り方と当日のマナー

  • アポは営業窓口経由で2〜4週間前に。「排出事業者としての定期実地確認」と伝えれば、まともな業者なら慣れています。むしろ嫌がる業者は要注意シグナル
  • 所要時間は説明30分+場内見学30〜60分、移動込みで半日が目安
  • ヘルメット・安全靴など先方の安全ルールに従う。写真撮影は必ず事前に許可を取る(他社の廃棄物や機密が写るため)
  • 質問は詰問調にしない。「教えてもらう」姿勢のほうが本音(処理の苦労、受入余力)を引き出せます

記録の残し方

チェックリスト+写真+日付の3点セットで1回1ファイル。確認者名・同行者・先方対応者も書き、5年保管(愛知県条例の保管年数に合わせておけば概ね安全)。この形式なら、行政の立入や社内監査・ISO審査で「実地確認やってますか?」と聞かれたときにそのまま提出できます

行けない場合の代替と、その限界

  • 優良認定業者の公表情報(産廃情報ネット等)で処理状況・維持管理情報を確認する — 法12条7項の確認方法として環境省も認める方法
  • 書面確認(許可証写し・処理フロー・維持管理記録の取り寄せ)
  • ただし条例義務のある自治体では代替が認められる範囲が条例で決まっています(優良認定業者への委託で免除、第三者・業界団体による確認の許容など。自治体差が大きい)。「忙しいから書面で」は義務地域では通りません

📥 持ち帰り資料(ダウンロード)

① スライド版「実地確認のすすめ」(社内説明用・全6枚構成)

  1. 表紙:実地確認は「書類と現実の突き合わせ」
  2. 法律上の位置づけ(法12条7項の努力義務+条例義務の自治体一覧)
  3. 義務がなくても行く理由(法19条の6と注意義務の証拠)
  4. 当日見る6つのポイント(写真イメージつき)
  5. 年間スケジュール案(委託先リスト×年1回の割り振り)
  6. 記録フォーマット(チェックリスト+写真+日付)

② 実地確認チェックリスト(Excel構成案・3部構成)

項目例
訪問前準備委託先の許可証写し入手/許可品目・期限の確認/前回確認記録の読み返し/アポ取得日・訪問日時/同行者・持ち物(ヘルメット・カメラ・名刺)
当日確認許可証と実態の一致/受入・保管状況(保管上限・飛散流出)/処理工程の見学/周辺環境/帳簿・マニフェストの流れ/経営状況ヒアリング — 各項目◯△×+所見欄
訪問後記録写真整理(撮影日・場所を記載)/総合評価/要フォロー事項と期限/次回訪問予定/確認者・承認者サイン欄/保管期限(5年)

次回予告

第10回「産廃担当の年間カレンダー」 — 6月末の法定報告から契約更新・実地確認の頻度まで、産廃業務の期日を1枚のカレンダーに整理します。


参考文献・根拠

検証ステータス: エビデンス検証済み(2026-08-19、8県の条例名・条文番号は愛知県とりまとめ資料で一次照合済み)。